ボードゲーム会で新しいゲームを遊ぶときに、必ず誰かが担当することになるのが「インスト」ですよね。ルールを説明する係、と言ってしまえば簡単ですが、SNSではよく問題となっています。
インストの話になると決まって出てくる意見のひとつに、
「インストに正解はない」
といった話が話題に上がりますが、本当にそうでしょうか。
この記事では、その「正解はない」という言葉の本当の意味を紐解きながら、考察を入れていこうかなと思います。
結論から言うと、インストには正解があります。ただし、それは誰にでも当てはまる万人共通の正解ではありません。
ボードゲームのインストに「正解はない」と言われる理由
まずは、なぜ「インストに正解はない」と言われるのか、そのあたりから。
インストのやり方について、人によって主張はさまざまです。
どれも正解であり、正解ではないんですよね。
最初に漏れなく全部説明すれば安心してボードゲームで遊ぶことができるのですが、インストにかなり時間がかかります。遊びながら説明すればテンポは良いですが、「なぜ最初にそれを言ってくれなかったのか」といったことが発生することもあります。
SNSでも、こういうやり取りをよく見かけますね。
「このボードゲームはこう説明したほうがいい」
「いや、このほうが分かりやすい」
そして、お互いに主張を譲らないまま、最終的に
「結局、インストに正解なんてない」
という結論で落ち着いたりします。
時と場合にもよるし、インストを受ける人の好みにもよるから仕方がない、正解なんてないよって言いますが、本当にそうでしょうか?
インストの「真の正解」は相手によって変わる
結論を言うと、インストには正解があります。ただし、先ほど言っていた「時と場合にもよるし、インストを受ける人の好みにもよる」。インストの正解は相手によって変わる正解なんです。
例えば、同じゲームを3人に説明する場合

ボードゲーム遊んだことない。ルールを文章で説明されてもわかりにくい。
こういう場合は、実際に駒やカードを動かしながら説明したほうが、理解しやすいと思います。

ボードゲームの経験はあります。細かいルールまで知ってから遊びたい。
この場合は、最初にルールを一通り説明して、例外処理なども説明してしまった方がいいかもしれません。

かなりボドゲで遊んでます。勝利条件や目的が分かれば、見ただけで大体把握できるかも。
この場合は、「何を目指すゲーム」なのかを最初に説明すれば、豊富な知識から補完して理解していってくれるかもしれません。
こんな感じで、それぞれに合った説明方法は違ってきます。なので、1つ、1回のインストで全員に理解してもらうインストが、本当に最適なのかという疑問が出てきます。
1人だけなら「正解のインスト」ができる
もしAさんだけに説明するのであれば、話は単純です。
「Aさんはこういう説明のほうが分かりやすそうだから、こうしよう」
と、相手の反応を見ながら、その人に合わせた説明の順番や粒度を調整すればいいだけです。
だけど、ボードゲーム会などは基本的に複数人で遊ぶので、インストも複数人同時に行います。仮に3人を相手にするなら、
- Aさんには実践型
- Bさんには詳細説明型
- Cさんには目的から説明
というふうに、それぞれ別のやり方で個別説明をするわけにはいきません。全員に対して、同時に、一つの説明をする必要があります。
これがあるから、「個人にとっての正解」と「複数人に同時に説明するための正解」が衝突して、SNSでよく問題が発生しています。
これこそが、インスト問題の核心だと言っていいと思います。1人ずつなら解決できる問題が、複数人が同時にいる場では解決できなくなります。
「インストの正解」が人によって違うのは過去の経験から
インストのやり方について提案してくれる人は、過去の経験から「こう説明したら分かってもらえた」という成功体験を持っています。
逆に、「この説明をしたら全然伝わらなかった」という失敗経験もあるはずです。その積み重ねから、「自分にとっての正解」が少しずつ形成されていきます。
例えば、
「最初に勝利条件を説明したら、みんなすぐに理解してくれてスムーズに遊べた」
この場合、先ほどのCさんに近いひと、C’さんとC’’の3人だったのかもしれません。インストが上手くいったのは間違いでもなく事実です。
だけど、とにかく実践的に説明してほしいAさんがいた場合、その説明方法ではうまくいかなかった。といった経験を持っている人もいるので、「その方法は間違いだ」というのも事実。
みんな自分なりの正解をもっているから、それぞれが自信をもって主張して、議論がなかなか終わらないんです。
「インスト」という言葉自体にも問題がある
更にややこしいのが、実は「インスト」という言葉そのものが、議論を複雑化している可能性があります。
普段何気なく使っている「インスト」ですが、そもそも何を指しているのかが曖昧です。
ボードゲーム界隈では、「ゲームのルールを説明すること」という意味で使われることが多いです。一方で、言葉の由来をたどると「instructional design(インストラクショナルデザイン)」という、学習・教育の設計に関わる文脈にたどり着きます。
インストラクショナルデザインとは、学習者が学習目標を達成できるよう、学習内容・方法・評価などを設計する考え方のことです。単に興味を持たせ続けることを指す言葉ではなく、もっと広く「学びをどう設計するか」という考え方全体を扱うものです。
この2つの意味を整理すると、次のようになります。
・「ルール説明」としてのインスト
このゲームでは〇〇します。次に△△します。最後に□□点を計算します。というように、世界観や目的、手段や方法、終わり方勝敗の付け方を順番に伝えることが中心になります。
・「学習」としてのインスト
相手が理解できる順番はどうか。どこでつまずきそうか。何を先に知れば理解しやすいか。実際にやってみたほうがいいか。どこまで説明すれば自分で判断できるようになるか。こちらは、情報を伝えることそのものよりも、相手が理解できる状態を作ることが中心になります。
この2つを同じ「インスト」という一つの言葉で呼んでいること自体が、議論をすれ違わせている一因かもしれません。
とはいっても、時代によって言葉の意味は変わってきます。ボードゲーム界隈ではインストは「ルールを正確に伝えること、ルール説明」と把握している人が多いと感じています。
初めてボードゲームで遊んだときは、「なぜインストって言うの?ルール説明でいいじゃん」と思っていましたが、今はルール説明という意味でインストを使っています。
「分かりやすいインスト」と「面白いインスト」は同じではない
見落とされがちな難しい視点があります。それは、「分かりやすさ」と「面白さ」は必ずしも両立しないという点です。
分かりやすさを優先すると、ルールを細かく説明することになります。すると初心者には理解しやすくなりますが、その分説明に時間がかかります。20~60分も説明が続けば、「早く遊びたい、いつまで続くのかな……」という空気がでてきます。
逆に、その場の興味を維持することを優先すると、最低限の説明だけしてすぐにゲームを始めることになります。遊びながら足りない部分を補っていくスタイルですね。この場合、テンポよく進められますが、「それ知ってたら、あの行動取らなかったのに」なんてことが起こる可能性もあります。
つまり、「良いインスト」とは何をもって良いとするのか、その評価軸自体が人によって違います。分かりやすさを評価軸にする人と、楽しさを評価軸にする人とでは、同じゲームの同じ説明を見ても評価が正反対になることがあります。
インストの正解は「何を目的にするか」でも変わる
評価軸だけでなく、そもそもの目的が変われば、正解も変わってきます。
| 目的 | 重視するもの |
|---|---|
| とにかく早く遊ぶ | 説明時間 |
| 初心者に理解してもらう | 分かりやすさ |
| 初見の楽しさを残す | ネタバレ回避 |
| 戦略ゲームを公平に遊ぶ | ルール理解 |
| パーティーゲームを盛り上げる | テンポ・期待度 |
| 推理ゲームを遊ぶ | 情報の出し方 |
| 子どもと遊ぶ | 年齢に合わせた説明 |
適当に並べてみましたが、こうして並べてみるだけでも、「正解のインスト」が目的の数だけあることが分かるかと思います。
SNSでよく見るインスト問題は、「何を正解とするのか」を決めないまま議論していることが多い気がしています。目的がずれたまま「どちらのインストが正しいか」を争っても、話がかみ合うはずがありません。
それでも「正解はある」と言える理由
ここまでの話で大事なのは、「唯一絶対の正解はない」ということと、「正解が存在しない」ということは、実は別物だという点です。
例えば、Aさんには実践型の説明が合い、Bさんには全体像から説明するほうが合うのだとしたら、それは「インストに正解がない」ということではありません。Aさんに対する正解と、Bさんに対する正解が違う、というだけの話です。
正解が一つに定まらないことと、正解そのものが存在しないことは、まったく違います。
前者は「相手ごとに最適解が変わる」という話であり、後者は「そもそも最適解というものが存在しない」という話です。
ということは、
インストの正解はある。ただし、それは万人共通の正解ではない。
ボードゲームのインスト問題が難しい本当の理由
ここまでの内容を整理してまとめてみると。
インスト問題が難しい理由は、単純にボードゲームのルールが複雑だからではありません。実際には、複数の問題が絡み合っています。
- 相手によって理解しやすい方法が違う
- 複数人に同時に説明しなければならない
- ゲームによって適切な説明方法が違う
- 説明しすぎると楽しさを奪う場合がある
- 説明不足だとゲーム中に混乱する
- 「インスト」という言葉自体が曖昧
- 人によって過去の成功体験が違う
これだけの要素が絡み合っているからこそ、ボードゲーム界隈では「インスト論争」が何度も繰り返されるのだと思います。
インストはどうすればいいのか?
これだけいろいろと、インスト問題について語ってみましたが、「じゃぁインストはどうしたらいいんだ」という話になりますよね。
説明を受ける人の共通点を見つけて、その共通点に合わせたインストを行う。のが一番正解に近い方法になります。
例えば、児童館などで子供相手のインストであれば、難しい言葉を使わずに実際に動かして見せた方が理解はしてもらいやすいでしょう。
他にも、ボードゲーム熟練者ばかりであれば、メカニクスを伝えたり専門用語を使った方が理解してもらいやすいかもしれません。
「集まった人が本当にバラバラで共通点なんてありません」といった場合は、すみませんが今は正解が見つかりません。より万人受けするような説明をするが正解に近い可能性が高くなります。
私が、様々なインストを受けて分かりやすいなと思った内容について、SNSで投稿してみたところ様々な反応がありました。
これも、どのボードゲームで遊ぶかによって「世界観がいる・いらない」や、「ステップを5つにすること自体が間違っている」など、議論になっています。
世界観なんてない、1プレイが30分以内のボードゲームであれば、次の内容がインストしやすいかなと思います。
こういった、ステップや型など用意はしていますが、これを元に90度ぐらい変わってもいいので、今、目の前にいる相手に合わせたインストをしてあげればよいと思います。
まとめ
「インストに正解はない」という言葉は、半分正しく、半分間違っています。
誰にでも当てはまる、唯一の正解はありません。しかし、目の前の相手を見て、その人が理解しやすい方法を選ぶのであれば、そこには確かに正解があります。
問題は、ボードゲームが基本的に複数人で遊ぶものだということです。Aさんにとっての正解が、Bさんにとっての正解とは限りません。だからこそ、インストは難しいよなと思います。
最後に、説明が苦手という人に少しでも力になれたらと、様々な本を読んでまとめた内容をお伝えしておきます。




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